個人研究

算数科: 志田 倫明

算数科: 志田 倫明

令和4年度,5学年担任をします。

 

学びはその子の既有や経験の上に成立するもの

大人から見ると,想定外の方向に向かったり

進んだかと思ったら戻ったりしながら試行錯誤しながら学ぶもの

その子はその子らしくいられるとき学ぶ

そしてその子らしさは,集団の中でこそ育ち生かされる

 

集団の授業の中でその子らしさが育ち

その子らしさが生きることで集団が育つ

その子らしさが輝く授業を提案していきます。

 

御批正,御指導よろしくお願いいたします。

ご意見,ご相談など,気軽にご連絡ください。

shida@fusho.ngt.niigata-u.ac.jp

 

子供の見方

2022.11.16

今年度,月に1回,教師の指導技術を見つめる研修会を行っています。

発問,指示,板書,指名,価値付け・・・,授業を見ていると,授業者の様々な指導技術が,子供の思考を支えていることが見え,毎回勉強になります。

面白いのは同じ授業を見ていても,同じ発問を話題にしていても,その捉えが人によって違うことです。

私は「子供の見方」の違いが大きな要因になっていると感じます。

育てたい資質・能力はすでに子供に内在しています。生きてきた中で様々な経験や学習をしているからです。

そうした子供をさらに育てたいと願うのが教師ですから,教師が定める目標は,子供に内在しているより高井ものを設定します。

この時,教師の見方が二つに分かれます。

一つはひき算の見方です。つまり,「目標に比べると子供はまだここができていない」「まだここが分かっていない」と,できていないところに目を向ける見方です。

もう一つはたし算の見方です。「目標に向けてここまでできることがある」「ここは分かっている」と,すでにできているところに目を向ける見方です。

同じ指導技術でも,子供を「ひき算の見方」で捉えている教師が使うと,子供は主体性を発揮しづらくなります。教師が求めているものを探り,忖度しようとするからです。

一方「たし算の見方」で捉えている教師が使うと,子供は主体的に自分らしく学ぶようになります。期待をかけられていることを自覚し,自分にあるものを発揮して目標に向かおうとするからです。

大人が子供を見下ろすように見るときと,子供目線で横並びに,さらには見上げるように見るときとの違いに似ているように思います。

先日,低学年の子供とシャボン玉遊びをしていたとき,ふと感じることがありました。

私が上から見下ろしたとき(教師目線)のシャボン玉。

私た子供と一緒に見上げた時(子供目線)のシャボン玉。

こんなに見えるものが違うのかと痛感しました。

同じ技術でも,「子供の見方」によって効果は大きく変わります。

子供と横並びにたち,子供のあるものを価値付け育てていく見方を大切にしていきたい。

いつもそう感じさせる,「指導技術」をテーマにした会は,毎月開催中です。

割合の中核とは?

2021.12.15

初等教育研究会Autumnの授業について協議会,アンケート,Slack等でたくさんのお声を届けていただき,本当にありがとうございました。

・比較から同じを見つける単元導入

・分数と小数,二つの表現

・均質性

このようなポイントで「基準量の1を捉える」ことに向かって,子供が割合世界に没入する授業を構想しました。

協議会では,改善につながるポイントを指摘していただきました。

・子供が本当に割合を使う必要のある場面になっているか。

・課題の曖昧さ。課題がぶつ切りで教師の押し付け感。

・私の抑えの甘さ(順序の問題,均質性の抑え等)

授業はいくらやっても課題が残ります。全てを改善するのは難しくても,視点を定めて改善に挑戦し,その結果をしっかり分析していける授業を心がけたいと思います。

また2月の初等研Winterもよろしくお願いいたします。

さて,今回の研究授業を通して,また授業改善を考えるためにも,私自身「割合」の教材研究が不足していると痛感しました。そこで,「割合」に特化した次のような研修会を計画しました。

授業を参観いただけた方も,参観していない方も,割合に興味がある方はぜひご一緒しましょう。

本質的な目標を意識する

2021.09.03

4学年 L字図形(複合図形)の面積の実践です。

先日のGATA-KEN25で話題少し触れ,問い合わせがあったのでご紹介します。

私は,より本質的な目標を見据えて指導することが大切だと思います。

そのために,目標を三段階で捉えるようにしています。

面積で言えば,内容は面積を求められるということより,「単位のいくつ分」や「図形の構成要素」であること。

そして,算数は「これまでの学習と今の学習の同じを考える(統合的に考える)」という頭の働かせ方をする教科だということを大切にしたいと考えます。

そう考えると一般的な展開の「縦に分ける」「横に分ける」「全体から引く」→「どの方法でも面積を求められる」では本質的な目標が匂ってきません。
そこで,次のように展開します。

①長方形は2本の辺(縦,横)で求められる。

 →L字は2本じゃ求められない!

②じゃあL字はどこの辺が分かれば?   

 →いろんなパターンがあるけど,全て4本だ(色画用紙で分解提示)

③なぜ4本なんだろう?         

   →どれも長方形2つ分の面積を求めているからだ  ☆図形の構成要素

④じゃあ穴あき図形も4本で求められる?   

  →求められる!あれ?同じだ!!

⑤何が同じ?                →面積,式,,,求めている長方形2つが同じ!! ☆統合的な考察

⑥全然違う図形だと思っていたけど,同じ長方形2つで作られているんだ。だっタラ・・・

このような展開だと,図形の構成要素,統合的な考察がねらえる授業になるかなあと

こうして子供は,全く別々だと思っていた形が,2つの長方形を用いて作られている構造は同じだということに気付かせることができました。

ご質問,ご意見はこちらまで→shida@fusho.ngt.niigata-u.ac.jp

廊下を静かに歩こう −5学年「速さ」−

2021.08.02

七月の生活目標は「廊下を静かに歩こう」

私「この目標を設定した目的は何?」と聞いてみました。

余談ですが,最近の私が授業で心がけていることは「目的」です。学びの主役を「方法」や「答え」から「目的」に変えていくことが深く学ぶことにつながると考えるからです。これについては,またの機会をみて書きます。

さて授業に戻ります。子供は次のように答えます。

「他の教室の授業の邪魔にならないように」

「騒がしくすると邪魔になるもん」

「廊下は歩かないと危険だから」「急に止まれないとぶつかったりするもん」

私「急に止まれない危険な速さは,秒速何mくらいでしょう」

「えー,5mくらい?」「10mじゃない」

「10mって,100m10秒の速さだよ」

「全然わかんない」

「普段どのくらいの速さで歩いているんだろう?」

『みんなが廊下を安全に歩けるように,歩く速さを調べよう』

こうして歩く速さを調べる学習の「目的」を明確にします。

確かめる方法が話題になったところで,みんなで方法のアイディアを出し合います。

秒速ですので,1秒に進む道のりを調べれば良いとアイディアが出ます。しかし,やってみると何だか微妙な結果になります。

「これ正確じゃないような・・・」

「1秒は短すぎる。すぐには止まれないよ」

「歩き始めは遅くなっちゃうんじゃない」

「2回目,3回目を測ったら違う結果になると思う」

計測して確かめてみると,確かに2回目は1m5cm,3回目は1m 61cmと,数値に大きなズレが出ます。

ここで子供は平均の考えをイカします🦑。

そして1秒ずつ複数回計測するよりは,10秒や60秒(1分)とまとまった時間計測して,1秒分の道のりを出すとよいと考え方を修正していきました。

さあ,実際に10秒間歩いて,自分の普段歩く速さを明らかにしていきます。

「10秒で14.3mだった。秒速は1.43mだ」

「僕は17.21mだった。四捨五入し秒速17.2mかな」

子供たちが普段歩いている速さは,それぞれ違うこと。

そして大体秒速12〜18mの中にみんなが入ることが分かりました。

ここで「じゃあ危険な歩く速さは?」と,問いが更新されます。

子供は導入で確認した,「すぐに止まれない速さ」を基準に,再度実際に歩いて確かめ始めます。

「秒速3m以上」

これが子供が出した結論です。

子供の言葉をかりれば,

「急に止まれないし,ぶつかったら相当やばい」

速さだそうです(大怪我につながるという意味)。

・・・その後

「分かったことを全校に伝えタイ🐟〜」

「これは絶対に伝えた方がいい!」

「ポスターにしようか?」「放送にしようか?」

子供の天才的なアイディアで,早速標識づくりへ。

提示するフロアによってそこを通る学年が違うため,標識のデザインを考えて変えているあたり,「目的」が強く意識されていると感じました。

こうなると追究は止みません。子供は

「標識を設置前と設置後で,どのように廊下の歩き方が変容したか調べタイ🐠」

と意欲を燃やしていました。

(データの活用として,教材にできそう!)

「目的」が強く意識されると,子供が深めていくことを実感しました。

5学年「速さ」2021年6月実践

ご意見,ご質問はこちらへお願いいたします。

shida@fusho.ngt.niigata-u.ac.jp

その子らしい分かり方

2021.06.26

「教室は間違えるところだ」「どんどんまちがえよう」

このようなスローガンのもと,子供が間違えることを恐れず主体的・対話的に学ぶ教室を実現したいと願っている先生方はたくさんいらっしゃると思います。

しかし,実際の授業ではどうでしょう。

教師「12.54の10倍は?」  子供「120.54です」 

例えばこのような子供が,授業で間違えることの価値を感じることはできるのでしょうか。

「間違えてくれてありがとう」   感謝されても・・・。

「間違えていいんだよ」      許されても・・・。

「○○というように考えたらよい」 解説されても・・・。

子供からすると,どれもしっくりきません。

間違いは,教師が想定しきれなかったその子なりの分かり方です。 そして,自分の分かり方の上にしか,学びは成立しないのです。

実際にあった“間違い”を見つめ,その子なりの分かり方を知ることで,子供に内在している力や,教科の本質を考えていきたいと思います。

そして授業改善にどのように繋げていくかを考えていきたいと思います。 

そこで,月に1回,実際の授業であった子供の間違いについて考える研究会を開催したいと思います。

多くの皆様から協議にご参加いただければ幸いです。

〈お申し込み〉https://forms.gle/wAbwAV6SYUqFA27C6

協議会パート2!開催

2021.02.27

初等教育研究会では,全国のたくさんの皆様からご参加いただきありがとうございました。

協議会では,笠井先生,尾﨑先生,二瓶先生という算数科のスペシャリストから鋭い指摘をいただき,学びが深まりました。そして新たなに見えてくるものがたくさんありました。

そして,たくさんの方々から授業と協議会を視聴していただき,アンケートには多くのお声を届けていただきました。

自分の授業を見つめ直すご意見ご質問について,今整理しながら考えているところです。

もっとご意見をお聞きしたい。

しっかりといただいた質問にお答えしたい。

そんな思いから,改めて協議の場を設定させていただくことにしました。

3月6日(土) 13:00〜14:30 

「4年算数(志田実践) 協議会パート2」 (GATA-KEN extra)

  ○再度,授業をYouTubeで公開!1週間何度も視聴できます!

  ○参会者参加型の協議会!

  ○笠井健一様(文部科学省 教科調査官)も参加。講演が聞ける!

  ○無料です!

お申し込みはチラシのQRコードか下記のURLからどうぞ。

〈申し込みフォーム〉  https://forms.gle/VGizdRxTV7ntpwgi7

たくさんの皆様とご一緒できることを楽しみにしています。

GT-KN16 授業公開

2020.10.27

GATA-KEN16で授業を公開しています。

4年生の「倍の計算」の内容です。

素直で自由なかわいい子供たちとの授業です。

私のやっていることは反省ばかり。。。

ぜひ,協議会や授業アンケートでご指導,ご助言いただきますようお願いします。

申し込んでいない方,30日までなら対応できると思います。ホームページからぜひ!

指導案と授業資料(ペア・グループ発話記録,ノート記録,最終板書記録)をアップします。

「正解」よりも大切な算数の授業

2020.09.07

これまで必要とされていた「正しい解を導く力」は,これからの社会では必要とされなくなると言われています。子供が生きる複雑で多様なこれからの社会は,正しい解のない課題に取り組み,より良い社会の創り手となることが求められます。

算数科の授業は,ただ1つの正しい解を導くことがゴールという授業観に囚われすぎてきたように思います。極端なことを言えば,子供がいくら懸命に考えていても,正しい解を導けなければ評価されないような場面です。

教育は大きな転換期を迎えています。この機会に,子供が学校で学ぶ意味,教科を学ぶ意味,教師の役割など,真剣に考えていきたいと思うようになりました。

まずは,これまでの算数の授業観を視点に,これからの算数の授業で大切にしたいことを考えていきたいと思います。そんな思いから,今回のタイトルをつけ,複数回投稿していきたいと思います。

決して正解を追求することや正解がある問題を否定するものではない。その中で育つ力があることも分かるからです。私がもっている問題意識は,正解に絶対的な価値をもってしまいがちな子供や教師の授業観や集団の状況です。手探りですが,子供の事実を基に考えていきたいと思いますので,どうぞ皆様のご意見をお待ちしています。


子供は,それぞれ考えたことをノートに書きました。中には次の子供のように解決に至らなかった子供もいます。

徹底したいのは,自分の頭に浮かんだこと,試したこと,間違えたこと,やり直したことなど,全て表現することです。私の問題意識にあるような算数観から,正解までたどり着けない考えは書けない,消さなきゃいけないと感じている子供が,想像以上に多いということは理解しておく必要があります。

人間の脳は失敗を避けるように働きます。これは子供も大人も同じです。その自然な働きを否定せずに,間違いややり直し,解決の途中まででも,自分が考えたことを表現できたことを心から歓迎することが教師の役割として大切にすべきことだと思います。

自分の考えを表現するという目的なら,ノートや学習形態の形式は自由であることを大事にしています。


メール:shida@fusho.ngt.niigata-u.ac.jp


違いを明らかにする

2020.06.02

算数の授業で何を大切にするか?

算数を知れば知るほど,たくさんの大切にすべきことがあり,一言で表現するのは難しいことです。

今回は日々の授業を通して感じる子どもの姿を視点に,算数で大切にすべきことを紹介します。算数・数学の視点から見られるとずれていることがあるかもしれませんが,思い切って提案することで,ご意見をたくさんいただきたいという思いからの提案です。

日々の授業を通して感じるのは,子どもは(いや人は)「同じと見たい」「同じでいたい」と感じやすいということです。

○様々な教室から聞こえてくる「同じでーす」の揃った声。

○同じ発表や講演を聞いている人は,全員が同じように理解したと思ってしまう考え。

○何かを考えるとき,みんなも同じように感じていて欲しいなあという思い。

様々なところで,「同じ」という幻想を抱いているのではないでしょうか。でも,現実はそんなことはありません。

○答えは同じでも,方法や考え方は異なります。

○同じ説明を聞いても,聞き取れている内容やそこから感じることは異なります。

○考えの基となる経験やその関連付け方は異なります。

いや,違っていることが自然なのです。

算数で大切にしたい,数学的な考え方,例えば帰納,類推,演繹的な考え方,統合的・発展的な考え方等,基本は“同じと見る”ことを求めています。

でも,教師が同じと見ることを急ぎすぎるあまり,子どもが大事な考え方を働かせることができない失敗を何度も経験してきました。

理由は,子ども自身が違いを明らかにできていないことです。

「違い」が明確になるから「同じ」に目が向き始める。

こんな思いで,行った実践4年生「1けたでわるわり算」を紹介します。

詳細は,近日中に開催するGATA-KEN onlineでもお話しします。

ご意見,ご質問,お問い合わせは,メールでお願いします。

shida@fusho.ngt.niigata-u.ac.jp

子どもが考える対策

2020.05.12

臨時休業中の分散登校が始まりました。

先日,ズームでの朝の会で「来週から登校が始まるよ!」と伝えたときの子どもたちの表情は忘れることができません。

目をまんまるにして,大きく開けた口を手で押さえ2〜3秒のフリーズ,,,その後,大歓声が起こりました。休校中いろいろな思いを我慢して頑張って過ごしていたことが,こんな場面からも伝わってきました。

さて,子どもたちが登校するとなると,学校側は感染拡大防止のための対策を様々準備すると思います。

しかし,その一つ一つの取組の意味を子どもたちは本当に理解できているのでしょうか。

「なぜ今までできていた遊びができないの?」

「何で半分ずつしか登校できないの?」

大人が子どものために行っている取組も,子どもからすると「押し付けられている」「制限されている」と感じてしまっては残念ですね。

私は,大人が真剣に考えているこの課題を,大人だけでなく子ども自身が考えるようにすることを提案します。今目の前にある課題は,子どもにとっても切実の課題であり,決まった取組の結果,行動を変容させなければいけないのは子ども自身だからです。

今回は,「教室の環境づくり」についてです。

「原則は確認して,方法は子どもが考える」ということを基本とします。

そこで,はじめに原則「身体的な距離を確保が必要なこと」を確認します。


すると子どもは,買い物場面やニュースで聞いたことなどの経験を持ち出します。

図にかいて考えるよう指示を出します。

※人数や教室の広さはそれぞれの状況に応じて決めてください。私の学校は8m×8mの教室に18人ずつの分散登校でしたのでそのまま扱いました。この条件が偶然にも算数の力の発揮につながっていきます。

うまく並べたいという理想と並べられないという現実にさを感じたとき,子どもは課題を明確にします。

解決できたと思っている子どもたち。でも実際にやらせてみると,これがうまくいきません。

活動の中で出てくる一人一人の困ったことを共有することで,対話的に解決のアイディアを生み出していきます。全員の机が教室に並んだ時には,拍手が起こり一体感が高まりました。

「この距離(2m)は教室にいるときだけじゃなくて,いつでも大切にしなきゃいけないね」

「これでは,クラス全員がみんな登校してきたら,教室に入ることができない。だから,半分ずつ交互に投稿するんだね」

と,活動後の子どもの声から,取組の意味を実感したことが伝わってきました。

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