プロジェクト F よりよい理科授業の在り方 #課題設定 #予想 #実験 #考察

2022.11.15 イベント

附属新潟小学校の理科部は,加藤聡,高野和明,小林孝俊の3人です。

理科学習の本質に迫る4つの質問から,よりよい理科授業の在り方について探ります!





Question1 課題意識をもたせる場面で大切にしていることは何ですか?

 

キーワード:要因を隠して提示,比較,既習事項や生活経験とのずれ

 

加藤:事象を比較できるようにしています。二つの事象を提示して,その違いは何によって起こるのかを考えさせることで,要因に目が向くようにしています。この時,その要因となるものはあえて,隠して提示します。例えば,音が聞こえる糸電話と聞こえない糸電話を提示して,糸の部分は隠して提示します。そうすると,子供は,「糸の形状や素材に何か秘密があるのでは」と考え始めます。



高野:事象を比較させることです。私は日常生活で見られる事象をよく扱うのですが,事象を一つだけ見ると,特に違和感はありません。比較させることで,二つの事象の違いの要因について課題意識をもたせられるようにしています。例えば,2本のろうそくを見せて,片方だけが早く燃え尽きる様子を提示したり,はさみと糸切ばさみを提示して切りやすさの違いを体感させたりといったことです。



小林既習事項や生活経験とのずれのある事象提示を大切にしています。思っていたのと違う。どうしてだろう?と思わせることができるようにしています。例えば,空気と水の性質では,空気でっぽうで玉が飛んだのだから,当然水を入れても玉が飛ぶはずだと思わせることが大切です。そう思わせてから事象提示し,飛ばなかったのはどうしてかという課題意識をもたせます 。



 

Question2 予想させる場面で大切にしていることは何ですか?

 

キーワード:根拠,既習や経験を想起

 

加藤:予想をさせる場面で大切にしていることは根拠をしっかりともたせることです。そのために,十分にその教材に触れさせます。先ほどの糸電話であれば,糸に触れさせたり,糸電話で遊ばせたりしてから予想を問うようにしています。そうすることで,そこで得た素材の感覚や音の振動を根拠として,予想をし始めます。何も与えないで,「予想をしましょう」は,わからない子にとっては,暗闇を走り続けているのに,「どこを目指しますか」と聞かれているようなものです。



高野:どうしてそう思っているのかを問い返し,既習や経験を想起させることです。理科で扱う事象は,子供の身の回りにありふれています。その経験を想起させることで,明らかにすることも見えてきます。経験に差があると感じる場合は,その場で体感させ,感じたことを共有してから予想を問うようにしています。



小林根拠をもたせることを大切にしています。既習事項や生活経験から根拠を示させることが多いです。しかし,既習がない初めて出会う事象の場合,生活経験から根拠を見出せない場合があります。そこで,今年度は事象提示を2回行うことを提案しています。1回目の事象提示で問題意識をもたせて,2回目で予想のヒントとなるような事象を提示しています。

 

 

Question3 実験の場面で大切にしていることは何ですか?

 

キーワード:実験を見る視点,見通し,結果をリアルタイムで共有



加藤:実験道具は,ある程度教師の方から,提示します。そこで,何を見ればよいのか実験を見る視点を話し合ってから実験に入るようにしています。例えば,曲がった川の水の流れの働きを調べる実験では,その要因である流れの速さを見ることを確認します。



高野:実験結果を解釈できるように,あらかじめ見通しをもたせることです。実験から得られる結果について,一目瞭然なものもありますが,よく見て,解釈しなければいけないことも多くあります。見通しをもっておくことで,どこに注目するかを子供が意識して実験を行うことができます。



小林:実験をしている時に各班の結果をリアルタイムで共有できるようにしています。黒板に表をかいておいて結果が出たところからかかせます。そうすることで子供は他の班の結果と比較して自分たちの実験を見直します。明らかに他と違う結果であれば,気付いた時点で実験をやり直し,正確な結果を得ることができます。

 

 

Question4 考察の場面で大切にしていることは何ですか?

 

キーワード:思考の筋道,結論の根拠,振り返り

 

加藤:子供の思考の道筋をたどることです。「こんな課題を調べてきているね」「こんな実験をしたね」「こういう結果だったね」などと板書を示しながら,どんな学習をしてきたのかを想起させます。その上で,結論を自分の言葉で書かせるようにしています。結論付けるのは,子供たち自身だからです。子供が自分の思考をたどって自分なりの答えを見つけていけるようにしています。



高野:本時で扱った問題に対する結論を問うことはもちろん,どうしてその結論に至ったのかという理由を問うようにしています。「○○が分かった」ということだけでは不十分だと考えているからです。理由を問うと,子供は実験方法や結果を挙げます。すると,実験の有効性や,科学的な問題解決を行ったことを自覚できるようになると考えています。



小林:自分の思いや考えを振り返りとして書かせることを大切にしています。中学年では,まず結果と考察(分かったこと)は違うことを意識させます。結果は見た様子や数値,考察はそこから言えることであり,課題の答えであることを繰り返し指導していきます。そのため,考察は穴埋めにして記述させたり,全体で確認したりしながら行います。その後が私が大切にしていることで,さらに,自分の予想と比べてどうだったか,実験で他に気付いたことや疑問はあるかなどの自由記述による振り返りを自分の言葉で書かせます。



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