6年国語「やまなし」単元計画&全時間指導アイデア

2023.11.03

 初等教育研究会では,県内・県外から多くの皆様にご参会いただきました。学びの多い研究会となりました。本当にありがとうございました。

 今回は,6年国語の定番教材「やまなし」を実践しました。複数教材を用いて,主教材「やまなし」を読み深めることと,複数作品を読み味わいながら,宮沢賢治が作品に込めた思いを読み取ることをねらいとして単元を構想しました。

 本単元においては, 二段階の複数教材活用の場面を設定しました。 第7時は,複数教材を基にして「やまなし」を読み深める時間,第8~9時は,教材文以外の複数の宮沢賢治作品を読んで読み深める時間としました。

 これは,子供たちから出た初発の感想を教師が集約して子供に示したものです。子供たちは,「やまなし」の表現のよさに着目しつつ,たくさんの疑問をもちました。その中でも,最も多かった感想は「よく分からない」でした。だからこそ,「自分なりに読み取りたい」という感想も多く見られました。そこで,まずは「作者である宮沢賢治とはどういう人か?」「他の作品から分かることはあるだろうか?」ということを子供たちと共有し,学習の見通しをもちました。

 第2時では,教科書にも掲載されている副教材「イーハトーヴの夢」を読み,賢治の人物像を読み取りました。

 第3時では,副教材として「雨ニモマケズ」と「永訣の朝」という二編の詩を読みました。これらを扱うことで,賢治の考え方や生き方により深く迫ることができると考えたからです。

 第4時では,初発の感想の段階で自分たちがもった疑問について考える時間を設定しました。子供たちは,自分なりの読みを考えていましたが,「作者がこの物語で何を伝えたかったのか」という課題は,なかなか明確にすることができていませんでした。そこで,これをみんなで追究していく課題として設定することにしました。

 第5~6時は,「やまなし」の内容の読み取りに入っていきました。子供たちは,「五月」と「十二月」のそれぞれの場面で何を表しているかを考えました。

 今年度,当校の研究で大事にしている「スタディ・ログ」という学習の履歴です。子供たちは,毎時間の授業の終末に,学習の振り返りと共に学習履歴の整理を行ってきました。これらを活用しながら,課題解決に向かっていきます。


 第7時は,大きな追究課題である「宮沢賢治がやまなしを通して伝えたかったことは何か」について考えました。「課題を考えるうえで,参考になりそうなものはありますか?」と問うと,子供たちは,主教材である「やまなし」の他に,「永訣の朝」「イーハトーヴの夢」「雨ニモマケズ」という副教材を挙げました。

 そこで,それらの四作品を一枚のシートにまとめて拡大した「複合拡大教材文」を子供たちに提示し,考える時間を設定しました。子供たちは,以下のように主教材と副教材を関連付けながら,賢治が「やまなし」に込めた思いを読み取ることができました。

 第8~9時には,「宮沢賢治がたくさんの作品を通して伝えたかったことは何か」について考えました。単元の初めから宮沢賢治作品特設コーナーを教室の一角に準備し,並行読書に取り組んできました。

 子供たちは,以下のように複数の作品を関連付けながら,賢治の思いを読み取っていきました。

 子供たちは,それぞれが読み取ったことを,「宮沢賢治ブックトーク」で友達に伝えました。交流する中で,子供たちは自分が読んでいない作品のことも知り,賢治作品の捉えを深めることができました。

 「やまなし」は,いつでも,誰が読んでも疑問が生まれ,様々な読みを生み出すことのできる不朽の名作です。様々な解釈ができるからこそ,その読みの妥当性の根拠とするために,複数教材の活用は有効であったと考えています。

 今後も,「主教材にはどのような副教材を組み合わせるのがよいのか」「複数教材を関連付けて考えさせるためにはどうすればよいのか」を追究していきたいと思います。

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