「種子の発芽と成長」「ふりこの運動」

2024.01.05

1学期の研究授業,2学期の初等教育研究会の授業を紹介します。

実証性のある予想をテーマに研究をしています。

実証性のない予想になる原因は,小学校理科では初めて目にする事象を扱うことが多いため,子供が自ら実証性があるかを検討するのが難しいことにあると考えています。教師は子供同士の話合いで実証性のある予想に収束されないため複数ある予想のうち,実証性のあるもののみを取り上げて授業を進めてしまうことがあります。これでは,子供の問題意識が途切れてしまいます。

そこで,課題設定のための事象提示の後で,情報を補うための2つ目の事象提示をしました。学習課題に関する情報を補うことで,子供自らがより実証性のある予想を見いだしていくことができるため問題意識が途切れることなく課題解決に向かうことができると考えました。

ここでは,それぞれの単元の課題設定のための事象提示と,情報を補うための事象提示を中心に紹介します。単元計画や授業の詳細はホームページの資料箱にある指導案をご覧ください。

「種子の発芽と成長」

インゲンマメの種子の中を観察し,子葉のはたらきを調べる場面の授業です。

「インゲンマメは,この種子の中でどうなっていたと思いますか」と問うて観察させました。種子の内部の葉,茎,根に対応する部分に着目させるためでです。子供は,葉や茎,根になる部分を確認することで,子葉に対応する部分がないことに気付き,「豆の部分は何のためにあるのだろうか」と学習課題を設定しました。

豆の部分は何のためにあるのか予想と理由とを問いました。

主な予想は4つでした。予想を 〇 ,根拠を ・ で示します。

○養分

 ・大部分を占めているから。

 ・メダカの腹のふくらみが養分だったから。

 ・成長するにつれて干からびるということは養分が使われたと考えられるから。

 ・人も胎盤から栄養をもらって大きくなるから。

○空気を含んでいる

 ・水につけたとき発芽しそうだったから。

○中を守るためのもの

 ・茎や葉,根になる部分は大切だからそれを守るため。

○温度を保つためのもの

 ・急に寒くなると枯れてしまうから中の温度を保つため。

これらの予想には根拠はあるものの,養分という予想以外は実験で確かめることが難しい実証性がない予想です。

そこで,普通に育てたインゲンマメと子葉を半分に切って育てたインゲンマメとを提示しました。予想を検討するために必要な情報を補うためです。

最終的な予想では養分ではないかという予想に収束しました。半分に切ったほうが小さくなっていたので,インゲンマメの養分が減って成長しにくくなってしまったのだろうと考えたのです。

普通に育てたインゲンマメと子葉を半分に切って育てたインゲンマメとを観察し,班で対話することで,様々な予想の中でどれが正しそうか再度考え,実証性のある予想を見いだすことができたと考えられます。

この後は種子をヨウ素液にひたし,子葉がでんぷんであることを確かめました。

「ふりこの運動」

ふりこの長さはどこまでなのかを考える場面です。単元の最後にこの授業を行いました。前時までにふりこの長さの捉えは統一されていません。ふりこの長さはおもりの中心までであると教えることが多いと思いますが,問題解決的な授業で自らふりこの長さについて考えることを目指して提案しました。

前時までの学習では釣り糸に実験用のおもりを付けていました。釣り糸の代わりに竹ひご(900mm)になっています。釣り糸だと間隔を開けておもりを付けたときに不規則な動きをしてしまうためです。おもりは位置を自由に調節できるようにスーパーボールに穴を開けたものを用いました。スーパーボールに穴を開ける際はピンバイスを用いると割れずに開けることができます。8セット作っても1時間はかかりません。

始めに,右のおもりが1つの振り子を提示して1往復の時間を測定させました。1往復の時間は1.9秒でした。次に,左の振り子を提示し,竹ひごの長さは同じであることを確認しました。ほとんどの子供はおもりの重さが変わっているけれど,竹ひごの長さが同じなので,1往復の時間は変わらないのではないかと考えました。しかし,実際に測定すると1.8秒であり,おもりが1つのときよりも1往復の時間が短くなっています。既習とのずれにより,どうしてだろうと疑問が生まれました。この疑問から「(竹ひごの長さは同じなのに)1往復の時間がちがうのはどうしてだろう」という課題を設定しました。

主な予想は5つでした。

○おもりが増えて,重くなったからではないか。

○おもりがスーパーボールだからではないか。

○ひもを竹ひごにしたからではないか。

○おもりの位置が違うからではないか。

○上のおもりまでの竹ひごの長さを考えると,おもり3つの方が竹ひごが短くなっているからではないか。

全てについて実験をして確かめていくのは難しいです。さらに,教師が1つの予想を選び実験をすると他の予想の子供の問題意識が途切れてしまいます。そこで,2つ目の事象を提示しました。

糸の長さは全て同じで,おもり1つ,2つ縦につなげる,3つ縦につなげる,という3種類の振り子を同時に振り,1往復の時間がどう変わるのかを見た目で判断させました。そうすると,1往復の時間が短いのは,おもりが1つの振り子,次におもりが2つの振り子,一番長いのはおもりが3つの振り子でした。

下図左の最初のふりこは全体の長さが同じで上のおもりまでの長さが異なり,右の2つ目のふりこは全体の長さは異なるが,上のおもりまでの長さが同じです。そのため,最初のふりこはおもりの重さが重くなると1往復の時間が短くなり,2つ目のふりこはおもりの重さが重くなると1往復の時間が長くなります。

最終的な予想では,ほとんどの子供はおもりの位置に関する予想をしました。

複数の事象を関連させて考え,予想を検討していくことで実証性のある予想に収束させていくことができました。

この後は,スーパーボールを動かし,真ん中の位置,上の位置で1往復の時間がどうなるのかを測定しました。

結果は下の通りです。

おもりが3つの振り子

1.8秒

おもりが1つの振り子 

下   1.9秒

真ん中 1.8秒         

上   1.7秒

このことから,振り子の長さはおもりの中心までであると考えるのが妥当であると考察することができました。

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